闘牛士服について



 18世紀、中、後期になって、Corrida(闘牛試合)が明確にEspectaculo(show)化してくると、闘 牛の様相が変化を始めました。闘牛規約にのっとって、各々の分担が決まりTorero(闘牛士)は 単にToro(闘牛)に対して<力>を示し<殺す>だけでは十分でなくなってきました。敵、味 方にもなり得るPublico(観衆)はToro(闘牛)を単に殺すだけでは、納得しなくなりTorero(闘牛士)は、金 銭を支払って観戦に来る観衆を満足させなければならない義務を負うことになりまし た。

 儀式でありショ−である闘牛試合、Torero(闘牛士)にとっては、闘牛選択のSorteo(抽選)をするときから、 一つのフィクションに成り得ないドラマの主人公なります。主人公は、儀式、ショ−をより優雅に、より完璧に演ずるため に、Arena(砂場)にそれなりの身なりを整えて出場することになったわけです。一般 的にVestido de Luces(光の衣裳)と呼ばれるTorero(闘牛士)の衣裳はGoyescosからきていま す。Corrida(闘牛試合)が明確に<ショ−化>してきた18世紀中、後期に使われ始めCorrida(闘牛試合) には不可欠な儀式用の装飾服となっています。儀式という言葉を使うと、どうして も闘牛と宗教との関連性を唱える人が出てくるのは否めません。

 Torero(闘牛士)は、金糸刺繍を施した<三つ揃え>Talequilla(闘牛ズボン)、Chaqutilla(上着)、Chaleco(チョッキ)−の服を 着用します。Subalterno(助手)は銀糸刺繍か、Azabacheと言う黒糸を施した服を着 用することが義務付けられています。Toreroは助手と同じ服を着用できますが、必 ず、階級を示す金刺繍のチョッキを着用します。尚、槍方もスタ−であった時代の名 残で、旧特権であった金糸刺繍の服を着用できます。Petoと言うプロテクタ−を馬に 付けはじめた1.927年以降、槍方は最も危険な職業からの脱出と同時に、スタ− 的地位は失ってしまいました。

 習慣的には、Torero(闘牛士)は総て身体を覆って演技することになるのですが、Montera(闘牛 帽子)は最後の演技には被らなくともよくなっています。特にBrindis<闘牛の捧呈− これからの演技と闘牛の死をあなた(あなたがた)に捧げます>を観衆にした場合、 Monteraは砂場に、特定の個人にした場合は、その個人に投げ渡します。試合が良か れ悪しかれ終われば、再度Montera(闘牛 帽子)を取りに行きます。

 その他、興味あるのは、束髪(髷)の習慣です。日本の相撲社会と同じよう に、闘牛界での引退式は、観衆の前での<Cortar la coleta-髷を切る>が、その儀 式になります。古くは、総ての闘牛士達が、自毛の束髪を付けていたのですが、その 習慣を偉大な闘牛士、Juan Belmonte(1892-1962年)が破り、その後は人工の髷を付 け出しましたが、未だに髷は闘牛士達の身近なシンボルになっています。

 Capote de Paseo(行進用ケ−プ)は良くキリスト像,好みのマリア像で 飾り付けられています。闘牛服と同じように金銀刺繍がおおいようです。Capote de Brega(闘技用ケ−プ)、は糊付けされた綿布で、通常表側がピンク色、裏が黄色です が、人によっては青、緑色を裏地に使っている場合もあります。大きさは、 Muleta(フランネルの赤い布)同様Toreroの好みによって大小まちまちです

 一体、闘牛士の服を一式揃えたら、どの位の値段になるのでしょうか。闘牛士 服仕立て屋から、最近(99年7月)の値段をきいてみました。
Traje de luces(闘牛服)-340、000Pts
Camisa(Yシャツ)-15、000Pts
Medias(ストッキング)-7、900Pts
Leotardos(レオタ−ド)-1、800Pts
Zapatillas(靴)-14、000Pts
Montera(帽子)-49、000Pts
Corbatin(ネクタイ)-2、500Pts
Fajin(細い帯び)-2、500Pts
Añadido(髷)-10、000Pts
Tornillo(髷止め)-2、500Pts
Capote de Brega(闘技用ケ−プ)-42、000Pts
Capote de Paseo(行進用ケ−プ)-77、000Pts
Muleta(赤いフランネルの布)-19、000Pts
Estaquilladores(ムレタ支え棒)-1、100Pts
Ayudas(似せ剣)-3、000Pts
Estoque/Descabello(剣、十字剣)-50、000Pts
総計637、800Pts
試合には最低、カポテ3枚、ムレタ3枚、剣、十字剣3組等を持っていくとなると、軽く100万Pts(ペセタ)は こえてしまいます。上記はあくまでも最低価格なので、闘牛士に依る特注などは、上 限なしの世界です。有名闘牛士になれば、後援会(Peña)などもできて、光の衣裳など をプレゼントされたりしますが、駆け出しの闘牛士には無理な話です。闘牛儀式のた めの制服と言うことを考えると、この位の投資は必要なのかもしれません。    


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